大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成10年(ワ)10017号 判決

原告

田内誠之

被告

吉村勝弘

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して金二四九一万八一一〇円及びこれに対する平成八年九月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その三を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、連帯して金六〇三八万八七七八円及びこれに対する平成八年九月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、停止した原告が運転する普通貨物自動車(以下「原告車両」という。)に被告吉村勝弘(以下「被告吉村」という。)が連転する普通貨物自動車(以下「吉村車両」という。)が追突した第一事故の後、原告と被告吉村とが事故現場で同事故による損傷状況を確認していたところ、被告池田一男(以下「被告池田」という。)が運転する普通貨物自動車(以下「池田車両」という。)が吉村車両に追突し、押し出された吉村車両が原告に衝突するという第二事故が起きたというものである。原告は、この事故により、左下腿挫滅創後大腿切断等の傷害を負ったとして、被告らに対し、自賠法三条、民法七〇九条、同法七一九条に基づき、損害賠償を請求した。

一  争いのない事実等(証拠等により比較的容易に認められる事実を含む)

1  事故の発生

左記事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成八年九月二六日午前二時二一分頃

場所 大阪市旭区太子橋三丁目府道高速大阪守口線守下八・一キロポスト先路上(以下「本件事故現場」という。)

事故車両一 原告車両(和泉八八す七五七三)

右運転者 原告

事故車両二 吉村車両(奈良一一そ五六七五)

右運転者 被告吉村

事故車両三 池田車両(なにわ八八さ三八九九)

右運転者 被告池田

態様 原告車両に吉村車両が追突した第一事故の後、原告と被告吉村とが事故現場で同事故による損傷状況を確認していたところ、池田車両が吉村車両に追突し、押し出された吉村車両が原告に衝突した。

2  被告吉村の責任原因

被告吉村は、本件事故当時、吉村車両を所有し、これを自己のために運行の用に供していたものである(弁論の全趣旨)。

3  被告池田の責任原因

被告池田は、本件事故当時、池田車両を自己のために運行の用に供していたものである(弁論の全趣旨)。

4  損害の填補

原告は、本件事故による損害に関し、自賠責保険から五三〇〇万円、労災から休業補償給付として四〇六万〇四一六円の填補を受けている。

二  争点(一部争いのない事実を含む)

1  被告吉村の過失(過失相殺を含む)及び因果関係

(原告の主張)

被告吉村の行為は、〈1〉原告車両へ追突した過失行為と〈2〉その後の後続事故を回避するための措置をとるべき義務を怠って高速道路本線上の原告車両と吉村車両との間に原告を導いたという過失行為から成るところ、これらの行為は一連の行為として一体と評価しうるものであり、右一個の行為と原告の負傷との間には因果関係がある。

(被告吉村の主張)

争う。

本件事故は、もっぱら被告池田が前方不注視のまま指定最高速度を超える高速度で進行した過失によるものである。原告が原告車両と吉村車両の間に佇立していたのは原告自身の意思と行動によるものである。被告吉村が第一事故の当事者であるからといって第三者の違法行為により後続事故が発生することまでを予見して、原告に対し、危険な場所に佇立しないように指示したり、事故車両を検分しないように指導するなどの注意義務があるなどとは到底考えられない。したがって、被告吉村は、自らの追突事故による損害の範囲についてのみ責任を負い、人身損害はもっぱら被告池田の過失行為によるものであるから、何ら賠償責任を負うものではない。

仮に、被告吉村に責任の認められる余地があるとしても、原告は自らの意思で危険な高速道路上に立って被告吉村とともに車両の損傷状況を確認しようとしていたのであるから、相当程度の過失相殺が行われるべきである。

2  被告池田の過失(過失相殺を含む)及び因果関係

(原告の主張)

被告池田には、指定最高速度(時速五〇キロメートル)を遵守し、進路前方の安全を確認して運転すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り時速約七〇キロメートルで前方の安全確認をしないまま進行した過失がある。なお、吉村車両はハザードランプを点灯していた。

(被告池田の主張)

争う。

本件事故は、被告池田が、片側二車線のうち左側車線を走行していたところ、本件事故現場手前の左路肩から左側車線にはみ出す形で停車していた訴外岩崎輝幸(以下「訴外岩崎」という。)運転の車両(以下「岩崎車両」という。)を発見し、これを避けようとブレーキをかけつつ右側車線に車線変更し、車線変更の途中で右側車線に停車中の吉村車両を発見したが間に合わず、その後部に追突したというものである。本件事故現場は、左カーブであり、しかも当時は夜間かつ降雨のため視界が不良であり、側壁の存在及び岩崎車両と吉村車両の位置関係からすると、吉村車両を発見することが遅れざるをえなかった。高速道路上に歩行者がいることは法律上予定されておらず、右のような諸事情を考慮すると、第一事故後、自らの危険を顧みず現場に佇立していた原告には少なくとも五割以上の過失がある。

3  共同不法行為の成否

(原告の主張)

被告らの行為は、同一の場所でほぼ同時に行われたものであり、かつ、原告は被告吉村の行為により不可避的に被告池田の行為による被害の現場にいることを余儀なくされたものであるから、客観的に関連共同しているものである。

(被告吉村の主張)

争う。被告吉村による第一事故と被告池田による第二事故は、時間的場所的に近接しているというだけであって、客観的に関連共同しているとはいえないものである。さらには、仮に客観的関連共同性が認められるとしても被告吉村が負う責任領域は自己の加害行為である第一事故と相当因果関係にある損害に限られるところ、第一事故によっては原告に何ら人身損害は生じていない。

(被告池田の主張)

被告らが共同不法行為責任を負うことは認める。

4  原告の損害額

(原告の主張)

原告は、本件事故の結果、左下腿挫滅創後大腿切断、右大腿下腿開放骨折、右腓骨神経麻痺、右下肢コンパートメント症候群、右脛骨動脈損傷、右踵皮膚壊死の傷害を負い、次の各損害を被った。

(一) 入院雑費 四三万四二〇〇円

(二) 原告父母の見舞に要した費用 三〇〇〇円

(三) 補装具調整のための交通費 八六〇〇円

(四) 文書費 一万二三〇〇円

(五) 家屋改造費 九九万三七四一円

(六) 休業損害 六八〇万円

基礎収入(日額) 一万〇八八〇円

休業期間 平成八年九月二六日から平成一〇年六月一二日までの六二五日

(計算式) 10,880×625=6,800,000

(七) 逸失利益 八七二四万七二六四円

基礎収入(日額) 一万〇八八〇円

労働能力喪失率 一〇〇パーセント(後遺障害等級併合二級)右足関節機能の著しい障害(一〇級一一号)右足指の全部の用廃(九級一五号)左下肢膝関節以上の喪失(四級五号)

労働能力喪失期間 四一年間(新ホフマン係数二一・九七〇)

(計算式) 10,880×365×1×21.970=87,247,264

(八) 入院慰謝料 三五〇万円

(九) 後遺障害慰謝料 二二五〇万円

(一〇) 弁護士費用 五五〇万円

(被告らの主張)

不知。

まず、原告は、後遺障害が併合二級に該当すると主張するが、直ちにこれを認めることはできない。すなわち、右足関節の機能障害については、〈1〉日時の近接した二通の後遺障害診断書において到底誤差とは言い難い数値が記載されており、直ちに信用できないし、〈2〉自動運動と他動運動の数値が異なることから、機能障害の原因は筋力の減退によるものと考えられるところ、診療録によれば、筋力は回復してきている。さらに、右足指の用廃については、これをうかがわせる検査結果の記載は何らみられない。

次に、原告は、後遺障害等級が併合二級であることを前提にして、これにより労働能力を一〇〇パーセント喪失したものと主張するが、その内容にかんがみると、これを認めることはできない。すなわち、原告の障害は下半身に限られているから、上半身を使っての労働はなお可能であるし、実際にも、原告は、一人で歩行して入院した外、仕事を行い、ときどきはトラックも運転していた。

第三争点等に対する判断(一部争いのない事実を含む)

一  争点1ないし3について(被告吉村の過失(過失相殺を含む)及び因果関係、被告池田の過失(過失相殺を含む)及び因果関係、共同不法行為の成否)

1  前記争いのない事実、証拠(甲一ないし三、乙一、丙一1、2、二、三)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、大阪市旭区太子橋三丁目府道高速大阪守口線守下八・一キロポスト先路上であり、その付近の概況は別紙図面記載のとおりである。本件事故現場を通る道路(以下「本件道路」という。)は、片側二車線の平坦なアスファルト舗装の道路であり、東行車線は左カーブとなっているが、前方の見通しはよい。本件事故当時は、雨が降っていたため、路面は濡れており、最高速度は時速五〇キロメートルと指定されていた。照明は、ナトリウム灯が約三〇メートル間隔に設置されており、比較的明るい状態であった。

原告は、平成八年九月二六日午前二時二一分頃、原告車両を運転し、時速約六〇キロメートルでヘッドライトを下向きに点けたまま本件道路の東行車線の第二通行帯を走行して本件事故現場付近にさしかかったところ、進路前方で交通事故が起こったため、前方を走る車両が順次急ブレーキをかけたので、これに応じて強めのブレーキをかけてハザードランプを点滅させて停止した。停止した直後、後続の吉村車両が追突し、吉村車両は別紙図面〈A〉地点に停止し、原告車両は同図面〈甲〉地点に停止した。被告吉村は、降車した後、原告の運転席の所まで来て謝罪した。原告は、この事故による怪我や痛みはなかったが、原告車両の破損箇所を確認するため、ハザードランプを点灯したまま車外に降りて原告車両の後部に回り、破損状況を確認し始めた。

訴外池田は、同じ頃、池田車両を運転し、ヘッドライトを下向きに点けたまま時速約七〇キロメートルで本件道路の東行車線の第一通行帯を走行して本件事故現場付近にさしかかり、別紙図面〈2〉地点で停止している岩崎車両(同図面〈ア〉地点)を発見し、これを避けようとして右に逃げたところ、同図面〈3〉地点で同図面〈A〉地点に停止している吉村車両を発見したが、同図面〈4〉地点で岩崎車両の右後部に衝突した後、同図面〈×〉2地点で吉村車両に追突し(右追突時の池田車両の位置は同図面〈5〉地点)、同図面〈6〉地点に停止した。吉村車両は、そのはずみで前方に押し出され、同図面〈甲〉地点に停止していた原告車両に追突し(右追突時の吉村車両の位置は同図面〈B〉地点)、同図面〈C〉地点に停止した。原告車両は同図面〈乙〉地点に停止した。原告は、停止した吉村車両の左前輸付近に挟まれ(同図面〈a〉地点)、被告吉村は同図面〈い〉地点に転倒した。原告は、本件事故の結果、左下腿挫滅創後大腿切断、右大腿下腿開放骨折、右腓骨神経麻痺、右下肢コンパートメント症候群、右脛骨動脈損傷、右踵皮膚壊死の傷害を負った。

以上のとおり認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  右認定事実によれば、本件事故による原告の人身損害は、池田車両及び吉村車両の運行によって生じたものと認められる。被告吉村は、自賠法三条の責任を負うことを争うが、右認定の事故態様によれば、池田車両が追突した際には吉村車両は停止中であったとはいえ、〈1〉原告に衝突したのは吉村車両であること、〈2〉吉村車両による原告車両への追突事故と池田車両による吉村車両への追突事故はごく短時間に連続して起きたものであること、〈3〉池田車両が吉村車両に追突したことに関しては、被告池田の過失のみならず被告吉村にも過失が認められること、〈4〉被告吉村は吉村車両の付近で立っていたことに照らすと、本件事故の際には、吉村車両も自賠法三条にいう「運行」状態にあったものと認めるのが相当である。したがって、被告吉村及び同池田は、自賠法三条、同法四条及び民法七一九条に基づき、本件事故によって原告の被った人身損害を連帯して賠償すべき責任を負う。

しかしながら、他面において、高速道路において路上に停車している車両を早期に発見して衝突する危険性の程度を即座に判断し、適切な回避措置を講ずることには困難な面があるところ、本件事故当時は夜間で雨が降っており、後続車両による追突事故が起きる危険性が予期しうる状況であったこと、原告としても自らの判断でそのような危険な場所に身をおいていたことにかんがみると、本件においては、三割の過失相殺を行うのが相当である。

二  争点4について(原告の損害額)

1  治療経過等

証拠(甲五、六、一七2、二一、乙五1、2、六1、2、七)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

原告(昭和四六年八月一二日生)は、本件事故当日の平成八年九月二六日、救急車にて行岡病院を経て大阪市立総合医療センターに搬送され、左下腿挫滅創後大腿切断、右大腿下腿開放骨折、右腓骨神経麻痺、右下肢コンパートメント症候群、右脛骨動脈損傷、右踵皮膚壊死等の傷病名で、直ちに緊急入院措置となり、同日、左大腿切断術、右大腿下腿開放骨折に対する観血的整復内固定術を、翌日、右下肢広範囲筋膜切開、右脛骨動脈修復術を行った。その後、徐々に回復し、同年一〇月一四日からは一般状態良好のため車椅子の使用が許可され、同月下旬からは、左大腿義足と右短下肢装具による歩行を目指して、両上肢・下肢近位筋の強化及び床上移動訓練が開始された。同年一一月二七日、右踵部に対する血管神経柄付有茎皮膚移植を行った外、その後、左大腿断端部の切開排膿を二回行い、平成九年八月五日に退院した(入院期間三一四日間)。全ての手術・処置が一段落したため、義足練習を開始した。

大阪市立総合医療センターの原医師は、前記傷病名につき、平成九年八月五日をもって原告の症状が固定した旨の自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(診断日平成九年八月五日、発行日同月二一日)を作成したが、同診断書によれば、左大腿下端部以下亡失、右足関節背屈不能、右足関節屈曲拘縮、右下腿多発性皮膚瘢痕があるとされ、右足関節の可動域は、背屈が自動マイナス四〇度(他動〇度)、屈曲が自動六〇度(他動六〇度)とされた。他方、同医師は、簡易保険障害診断書兼入院証明書(平成九年八月五日付)では、他覚的所見として、左大腿下端部以下亡失、右足関節の背屈筋力ゼロ、右足関節の屈曲拘縮等があるとされ、右足関節の可動域は、背屈が自動マイナス一〇度、底曲が自動三〇度とされ、日常生活については、装具・義足なしでは坐位可能のみで立位は不可能であり、装具・義足装着にて短距離(二〇ないし三〇メートル)の歩行可能とされた。また、同医師は、原告代理人からの照会に対し、〈1〉左下肢の亡失は膝関節以上からであること、〈2〉足関節の屈曲は底屈と同じ意味であること、〈3〉自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書における足関節の可動域の記載は重力を利用した場合の記載であること、〈4〉右第一ないし第五足指はいずれも屈曲(底屈)はするが、背屈はしにくい状態であること、〈5〉右足関節及び右足指の障害は、右坐骨神経及びその枝の広範用にわたる血流障害及び圧迫による神経障害により右足関節及び右足指の自動運動が困難となり、これに軟部組織の拘縮も加わって、発生したものと考えられることを回答した。

また、大阪市立総合医療センターには、経過観察のため整形外科に平成九年九月一一日から通院し、右母趾陥入爪のため形成外科に同年一〇月二三日から約三か月間通院した外、右大腿下腿髄内の抜釘目的で整形外科に平成一〇年五月一五日から同年六月三日まで二〇日間入院し、その後も同年六月一二日まで通院した。

自賠責保険会社は、原告の後遺障害につき、最終的に、右足関節の機能障害が一〇級一一号、右足指の機能障害が九級一五号で両者を併せて八級相当、これに左下肢の欠損障害についての四級五号を併合して二級に該当すると判断した。

2  後遺障害

右認定事実に照らすと、原告の症状は平成九年八月五日に固定し、後遺障害等級の併合二級に該当する後遺障害が残存したものと認められる。

これに対し、被告らは、右足関節の機能障害については、〈1〉日時の近接した二通の後遺障害診断書において到底誤差とは言い難い数値が記載されており、直ちに信用できないし、〈2〉自動運動と他動運動の数値が異なることから、機能障害の原因は筋力の減退によるものと考えられるところ、診療録によれば、筋力は回復してきていると主張する。しかしながら、右足関節は、いずれの診断書によっても結局のところ二〇度の範囲でしか可動しないことが示されており、通常の可動域に照らすと、著しい機能障害があると認められる。また、原告の右足関節付近の筋力は若干改善したものと認められるが(乙七)、種々の影響が考えられるのであるから、被告らの右主張を採用することはできない。

また、被告らは、右足指の用廃については、これをうかがわせる検査結果の記載は何らみられないと主張するが、原医師は、原告の執刀や診療に中心的に従事したのであるから、特段改まった検査をするまでもなく原告の右足指の状態を把握し、完全硬直に近い状態にあると判断し、診断書に記載したものと認められるのであって、被告らの右主張を採用することもできない(なお、被告池田は、後遺障害を判断する際、関節可動域については他動の数値を参照すべきであると主張するが、後遺障害の認定にあたっては労働に対する影響を考えることが重要であるから、自動の数値を参照すべきであり、被告池田の右主張を採用することはできない。)。

3  損害額(過失相殺前)

(一) 入院雑費 四三万四二〇〇円

原告は、本件事故による傷病の治療のため、合計三三四日間入院したから(前認定事実)、一日あたり一三〇〇円として標記金額の入院雑費を要したと認められる。

(二) 原告父母の見舞に要した費用 三〇〇〇円

原告父母が原告を見舞いするにあたり、標記金額の駐車場代金を要したものと認められる(甲七)。

(三) 補装具調整のための交通費 八六〇〇円

原告は、装具調整のため交通費として標記金額を要したものと認められる(甲八)。

(四) 文書費 一万二三〇〇円

原告は、文書費として標記金額を要したものと認められる(甲九1、2一〇、一一)。

(五) 家屋改造費 九九万三七四一円

原告の障害内容に照らし、家屋改造費として標記金額を要するものと認められる(甲一二、一三1、2)。

(六) 休業損害 六八〇万円

証拠(甲一四1ないし3、一五、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時、株式会社ユニットのトラック運転手として稼働し、一日平均一万〇八八〇円の収入があったものと認められる。

そして、前記1の認定事実及び弁論の全趣旨に照らすと、原告は、本件事故により、本件事故日である平成八年九月二六日から平成一〇年六月一二日までの六二五日間は給与に値する労働を行えない状態であったと認められる。

以上を前提として、原告の休業損害を算定すると、次の計算式のとおりとなる。

(計算式) 10,880×625=6,800,000

(七) 逸失利益 八〇二六万七四八二円

原告(昭和四六年八月一二日生)の逸失利益算定上の基礎収入は、右(六)認定の事情からすると、年額三九七万一二〇〇円(一万〇八八〇円×三六五日)と認められる。

原告の後遺障害は、自賠責保険に用いられる後遺障害等級の併合二級に該当するものであるが(前認定事実)、〈1〉原告は、リハビリを兼ねて平成九年九月頃から株式会社ユニットで検品の仕事に従事し、その後、夜間の配車業務、クレーム処理等に従事していたこと、〈2〉当初無給であったが、平成一〇年一一月からは月一〇万円(通勤手当を除く)の支給を受けていたこと、〈3〉右勤務の途中からは自分で自動車を運転して出勤していたこと、〈4〉月一〇万円程度の給与では、自動車の維持費程度にしかならないため、平成一一年一二月一五日をもって自己都合退職したこと、(甲二二1ないし11、二四、原告本人)に照らすと、前認定の後遺障害によって、その労働能力の九二パーセントを症状固定時から四一年間にわたり喪失したものと認められる。

以上を前提とし、新ホフマン式計算法により、年五分の割合による中間利息を控除して、後遺障害による逸失利益を算出すると、次の計算式のとおりとなる。

(計算式) 3,971,200×0.92×21.970=80,267,482

(一円未満切捨て)

(八) 入院慰謝料 二九五万円

原告の被った傷害の程度、治療状況等の事情を考慮すると、入通院慰謝料は標記金額が相当である。

(九) 後遺障害慰謝料 二二五〇万円

前記のとおり、原告の後遺障害は、併合二級に該当するものであり、原告の右後遺障害の内容及び程度を考慮すると、右慰謝料は、標記金額が相当である。

4  損害額(過失相殺後)

右3に掲げた損害額の合計は一億一三九六万九三二三円であるところ、前記の次第で三割の過失相殺を行うと七九七七万八五二六円(一円未満切捨て)となる。

5  損害額(損害の填補分控除後)

原告は、本件交通事故による損害に関し、自賠責保険から五三〇〇万円、労災から休業補償給付として四〇六万〇四一六円の填補を受けているから、前記過失相殺後の損害額からこれらを控除すると(ただし、休業補償給付については過失相殺後の消極損害から控除する。)、残額は二二七一万八一一〇円となる。

6  弁護士費用

本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告の弁護士費用は二二〇万円をもって相当と認める。

7  合計

損害の填補分控除後の残額に弁護士費用を加算すると、二四九一万八一一〇円となる。

三  結論

以上の次第で、原告の請求は、被告らに対し、連帯して二四九一万八一一〇円及びこれに対する本件事故日である平成八年九月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

別紙図面

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例